浮世絵コンシェルジュ 畑江麻里

歌川国貞(三代豊国)の美人画

まず最初は、江戸時代後期に絶大な人気を誇った国貞の美人画から♪

《新吉原京町壱丁目 角海老屋内 八千代》天保4年(1833)頃

 歌川国貞(三代豊国)は江戸後期の浮世絵界を代表する絵師の一人です。浮世絵二大ジャンルの美人画と役者絵を中心に戯作の挿絵や源氏絵なども手掛け、生涯に万を越える膨大な数量の作品を制作しました。幼い頃から絵を好み、十代半ばで歌川派隆盛の総師・初代歌川豊国に入門。天保15年(1844)には師「豊国」の名を襲名しました。

 この絢爛豪華な花魁の衣装には、桜や牡丹、水仙などといった季節の花々があしらわれ、帯には龍や雷雲などの模様が緻密に描きこまれている上、十色以上の豪勢な色で表現されています。吉原の花魁たちのファッションは、当時流行の最先端としてとらえられ、常に江戸庶民から注目されていました。

この花魁・八千代は、通称「角海老」と呼ばれた妓楼「海老屋」に属していて、天保5年の春に刊行された吉原の案内書『吉原細見』に記されています。

 八千代の左右には、「ふみの」と「たより」という二人の禿(かむろ)がいるのですが、左側の禿は豪華な衣装に隠れて、頭の飾りと左足しか見えません。三人が描かれていながら、衣装はあたかも混然一体となっています。

 

 国貞が描く美人画は、江戸後期の彫と摺りの高度な技術が使われているのが特徴ですが、この作品にも当時の最高峰の彫・摺技術が駆使されていて、極彩色の着物には目を見張る美しさがあります。

 

※この下にどんどん「今日の美人画」を更新していきたいと思います。

渓斎英泉の美人画

歌川国貞のライバル、渓斎英泉の美人画。

渓斎英泉《浅草山之宿仮宅 佐野槌屋内 佐川》文政7年(1824)頃

 英泉は、はじめ狩野派を学んだ後、菊川英山の家に寄寓したことから英山とその父の英二に師事し、英山の表現を基盤とした切れ長の目の女性像を得意としました。

 この作品は、文政頃にドイツのベルリンで開発された発色の良い藍色の輸入染料「ベロ藍」一色を主体とする「藍摺」の美人画です。文政7年(1824)の火災によって浅草に仮宅を構えていた頃の遊郭、佐野槌の花魁「佐川」が描かれています。

英泉は藍の濃淡を駆使し、着物にあしらわれた桜と孔雀の華やかな紋様を、爽やかかつ精緻に表しています。

英泉は国貞と人気を二分した時期もありましたが、国貞に負けてしまったことは知られてないので、何かの機会に書ければと思います♪

英泉の美人画②

黒字に桜と松に亀の紋様が入った衣装をまとう妓楼玉屋の花魁「政那木」が何か考え事をしている場面。

この作品は、8名の花魁を取り上げた内の一作で、英泉の師である英山の様式が踏襲されています!

このシリーズは、題名の「くるわ」の部分の表記が「廓中」であるものが5枚、「曲中」となっているものが3枚確認されていて、こま絵には茶屋の「松屋」が見えます。

菊川英山の美人画

菊川英山は、父の英二から狩野派を、鈴木南嶺に円山四条派の技法を学んだ浮世絵師です。
活躍した期間は文化から文政初期と短いですが、歌麿風の美人画からやがて面長で三日月の眉、黒目がちな目という独自の美人像へ発展していきました。
この作品には、江戸時代後期の戯作者・十辺舎一九の狂歌「楊貴妃の はたへはしらず そのうへを 越路にひらく 雪のはつ花」と越前国三国(現在の福井県坂井市三国町)の遊女の「はつはな」が合わせて描かれています。

英山の美人画②

《風流忠臣蔵画兄弟 十一段目》
冬の風物詩といえば忠臣蔵。毎年12月になると忠臣蔵の話題が多くなりますので、歌舞伎演目「仮名手本忠臣蔵」を題材に見立てて美人画に仕立てたシリーズの一枚をご紹介したいと思います!
この作品は、クライマックスともいる「仮名手本忠臣蔵」十一段目の炭小屋の場面です。仇敵の高師直を発見したところが背景に描かれています。この女性の提灯をよく見ると、義士の装束と同じ柄になっています。
英山の美人は六頭身くらいで、彼より以前の歌麿や清長の女性像が八頭身であるのに比べて、実際の女性により近いことがわかります。

英山の美人画③

《風流美人絵兄弟 忠臣蔵 七段目》文化9年(1812)

歌舞伎演目「仮名手本忠臣蔵」の物語を遊女の姿に見立てた連作の一つ。

右上のコマ絵にある通り、祇園一力茶屋で放蕩する大星由良助(大石内蔵助)が縁側で密書を読んでいたところ、二階の遊女と床下に潜んでいた敵方の斧九太夫に盗み読まれてしまう、七段目「祇園一力茶屋の段」をモティーフとしています💡

長い文を持つ遊女を由良助、その横で屈んで文を読む禿を九太夫になぞらえて、一力茶屋の状況が見立てられています。

謹賀新年

あけましておめでとうございます🎉

本年もよろしくお願いいたします。

初夢に歌川国貞が出てきたので、最初の投稿は国貞の美人にします⭐️笑


歌川国貞(三代豊国)《東都湯島天満宮》

この作品には、菅原道真を祀り、学問成就の神社として知られる湯島天満宮に参詣にきた母子が描かれています。

中央の母親に背負われた子供は、天神(道真)の乗り物である牛車のおもちゃと、七五三の千歳飴を持っていることから、五歳のお参りであることが判ります。

六玉川、八景など和歌の歌枕となる名所と組み合わされることの多かった美人像ですが、次第にこのような、江戸名所や年中行事と共に描かれるようになっていきました。

歌川国芳の美人画

お正月は気づいたら終わっていましたが…国芳の美人画を紹介します!

歌川国芳《五節句之内 睦月》

初代豊国の後、国貞と共に歌川派の双璧をなし、勇壮な武者絵と奇抜な発想で人気を博した歌川国芳の美人画で、五節句の時期と女性像を合わせたシリーズの一作です❣️

七草粥を食べて無病息災を願う「人日の節句」のある睦月(1月)7日の頃を、三井越後谷の並ぶ駿河町(現 中央区宝町)を舞台に描いています。

種々の凧が散らばる中、羽子板を持つ女性、手拭を肩に銭湯に向かう女性などが堂々とした立ち姿で描かれています。 


ちなみに私事で恐縮ですが…1月7日の「人日の節句」の日に、昨年学会発表した論文が学会誌に掲載されることが決まりました✨✨

喜多川月麿

妹にかわいい第一子が誕生したので、こちらの作品ご紹介します!

喜多川月麿《子をあやす母》
文化期(1804~18)大判錦絵、版元:山口屋藤兵衛

月麿は初代歌麿の門人で、「菊麿」などとも号して、寛政後期から文化末期にかけて作画を行いました。
二代歌麿と同じく、師の表現をよく踏襲しており、本作も歌麿も取り組んだ母子図を美人大首絵の手法で描くなど、歌麿様式を継承していることが窺えます。
向こうの透けた「燈籠鬢(とうろうびん)」を結った母親は、我が子の愛らしさのあまり、その頬に舌を出し、子はその腕の中で、釣り竿などのおもちゃを手に楽しそうにはしゃいでいます。

妹はすっかり母親らしくなり、かわいい娘に夢中です。

メニュー

INFORMATION

【お知らせ】

2024年11月23日(土)

14時~16時30分

「第4回畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」を開講します!

2024年10月

三井住友銀行が発行する小冊子『ことも』に取材撮影され、掲載されました!

※この小冊子はエルダープログラムに加入している方のみに配布する冊子です

SMBC『ことも』10月発行号

巻頭特集

2024年9月21日(土)

映像メディア学会で講演

「浮世絵イノベーション」

 ※9月28日(土)にこの講演の報告会を森下文化センターで行います

2024年5月26日(日)

京都きもの市場が主催する日本最大級の着物展示会

5/22(水)〜5/27(月)

@東京丸の内KITTE

このイベントにて

「初心者でも楽しめる浮世絵講座」 が大盛況にて開催されました

15時〜、16時〜の2回。

(満席クローズ)

2022年11月4日 双子を出産

 【テレビ出演】

2022年9月19日(月)

フランスのテレビ局"ARTE"

歌川広重特集に出演しました!

"Invitation au Voyage"(邦題:旅への誘い)

 9/19 18:10〜

放映リンクはコチラ

【浮世絵連載(全5回)が掲載中】

「畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」で取り上げた内容の一部
「浮世絵きほんのき!」(全5回の連載)が、
京都きもの市場が運営するメディアサイト「きものと」に掲載中!

 

一点もの?大量生産? vol.1

https://www.kimonoichiba.com/media/column/759/

 

黒一色からフルカラーへ vol.2

https://www.kimonoichiba.com/media/column/795/

 

浮世絵はどうやって作られる?vol.3

https://www.kimonoichiba.com/media/column/826/

 

 浮世絵の題材はこんなにも幅広い! vol.4

https://www.kimonoichiba.com/media/column/930/

 

美人画は当時のファッション雑誌!? vol.5(最終回)

https://www.kimonoichiba.com/media/column/1003/

 

◆2022年7月24日(日)

「第3回  畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」

14時から16時30分

6/24、7/10と大好評だったので、さらに追加で、オンラインで開催します!

2022年7月21日(木)

 

都内の大学で、ゲスト講師として講座とワークショップを行いました!

 

◆2022年7月10日(日)

「第3回  畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座(オンライン)」を追加で開催!

 

◆2022年6月26日

「第3回  畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」

今回も定員以上となり、大盛況で開催しました!

インスタグラム@hataettiで近況を更新中!

フォロワー3000人を突破しました!

◆Instagramのサイトは、

コチラです!

 

 お気軽にFollow Me

2022年6月20日(月)

都内の大学でゲスト講師として講演しました!

◆5月19日(木)

 ロータリークラブで講演しました!

「浮世絵美人画にみる評判娘ー笠森お仙を中心にー」

◆4月30日(土)

TOKYO MXテレビ『ぐるり東京江戸散歩』「江戸時代のアイドル」に出演しました!

修士論文で取り上げた「笠森お仙」を中心に、現代のアイドルと女優さんに解説してきました♪

※6/7までTVerという配信アプリで見逃し配信しています

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2022年夏頃

フランスのテレビ"ARTE"歌川広重特集に出演します!

"Invitation au Voyage"

(邦題:旅への誘い)

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2021年11月10日(水)

大学の授業で講師として、浮世絵についてお話しました!

「浮世絵とジャポニスム」(60分)

「第2回 畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」若い参加者も多く、大盛況で無事に開催いたしました!

【定員になりました】「第2回畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」

※オンライン、オンサイトはどちらも同じ内容の講座となっています

文化庁・文化財研修事業 浮世絵木版画彫摺技術者育成事業報告

 

竹久夢二学会 例会(於:群馬県立館林美術館/群馬県立近代美術館)

2021年3月7日(日)

インターネット番組にゲスト出演しました!

足立区北千住のインターネット番組Cwaiveにゲスト出演し、美人画研究会をはじめ、足立を描いた浮世絵やその歴史を簡単にご紹介しました♪

番組名:Coming Soon!文教国際です!

2021年3月6日(土)

日本顔学会25周年記念シンポジウム(於:資生堂)

2021年2月28日(日)

第26回美人画研究会をZOOM併用で開催しました!

2021年2月21日(月)

ラジオ番組で「美人画研究会」の活動報告をしました!

13時~かわさきFM

2021年2月22日(日)

朗読劇(美人画研究会協力)に出演しました!

『雪の女王』 雪の女王役  『12の月の物語』 ホレーナ役

2021年1月31日(日)    「第1回 畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座」大盛況で無事に開催いたしました!

【定員になりました!】第1回 畑江麻里の初心者でも楽しめる浮世絵講座を開催♪

お陰様で定員(20名)になりましたので、予定より早く募集を終了いたします

 

畑江まで直接ご連絡お願いします~♪

ukiyoe.concierge@gmail.com

11月下旬           浮世絵コンシェルジュとして映画『宮城野』の魅力を監督と語ります!

舞台に出演しました

2020年10月9、10、11日

初めて「美人画研究会」が舞台『浅草夢やしき』の舞台協力になり、芸者・タマ子役で出演しました!

舞台稽古を重ねるごとに台詞や出番が増え、シーン⑤では、日本舞踊を舞った後「美人画研究会」の宣伝をする場面もありました

【舞台公演情報】

2020年10月

  9日(金)15:00 19:00

10日(土)13:00 17:00

11日(日)11:00 15:00

 

チケット:5000円

会場:雷5656会館5階「ときわホール」

住所:東京都台東区浅草3-6-1

 

※チケットご予約※

コロナ対策徹底で、劇場での購入ができないため、

 

畑江まで直接ご連絡お願いいたします~♪

ukiyoe.concierge@gmail.com

舞台出演がきっかけで、学生時代お世話になった、渋谷円山町芸者・鈴子姐さんに再会しました!

【中止】コロナの影響で、非常に残念ながら中止になりました

2020年10月10日(土)

中山道広重美術館2020年度連続講座にて講演「広重とジャポニスム」

2020年9月5日(土)

第24回美人画研究会を満員御礼で無事に開催いたしました!

2020年7月25日(土)

すみだ北斎美術館にて開催

映像情報メディア学会・研究イノベーション学会にて登壇!

登壇内容「浮世絵から現代の美人画へ」は無事好評におわりました

2020年2月9日       第22回美人画研究会を満員御礼で無事開催しました!

学会誌に論文が掲載されました

日本フェノロサ学会機関誌『LOTUS』第39号に

論文が掲載されました

「大正期「複製浮世絵」における高見澤遠治

―その卓越した精巧さの実見調査と、岸田劉生らに与えた影響の考察―」

 

竹久夢二学会で研究発表しました

2019年3月30日(土)

竹久夢二学会にて研究発表(於:拓殖大学文京キャンパス国際教育会館)

竹久夢二の「美人画」の線 ― 現代浮世絵彫師の作品の分析から ―」

2018年11月 

文教大学の授業にて浮世絵をテーマにゲストスピーカーとして講演

※こちらに掲載しました

2018年9月  

日本フェノロサ学会 研究発表(於:東京藝術大学)

※こちらに掲載しました